情報アーキテクチャとALPS

API設計やシステム構築において、情報アーキテクチャ(IA)の考え方をドメインモデリングに適用することで、ビジネス要件を体系的に整理できます。もともとUXやコンテンツ設計で培われてきたIAの「意味」「構造」「インタラクション」という要素は、ビジネスドメインの知識を構造化する際にも重要な役割を果たし、ALPSはこの考え方を標準化された方法で表せます。

情報アーキテクチャの適用

情報アーキテクチャの専門家であるDan Klynは情報アーキテクチャ(IA)を「意味(Ontology)」「構造(Taxonomy)」「インタラクションのルール(Choreography)」の相互作用として定義しました。1 これらの概念はコンテンツ設計だけでなく、システム設計の基盤としても機能します。OpenAPIがAPIの技術的な詳細(エンドポイント、HTTPメソッド、リクエスト/レスポンス構造など)に焦点を当てるのに対し、ALPSはこれらのIA概念を用いてビジネスドメインの構造化を行います。

設計プロセスにおける位置づけ

ALPSは設計の初期段階からビジネス要件とシステム設計を橋渡しします。従来のエンドポイント中心の設計が決定済みの仕様を文書化する段階で使用されるのに対し、ALPSは要件定義のフェーズから活用できます。これにより、ビジネス要件の解釈の違いを早期に発見し、修正できます。また、技術チームとビジネスチーム間で共通言語が確立され、設計変更の影響範囲を把握しやすい仕組みが整えられます。

ALPSはAPIエンドポイントの設計を超え、ビジネス領域の知識を体系化し共有するための手段を提供します。信頼できる唯一の情報源(Single Source of Truth, SSOT)として、システムの構造と動作を一貫してモデル化します。ビジネス用語を中心とした記述により、複雑なビジネスルールを明確に表現し、ワークフローを可視化し情報の相互作用を俯瞰し直感的に理解できます。

技術変化への対応

ALPSはさまざまなAPIスタイルに適用できる柔軟性を持っています。技術の進化によってアーキテクチャスタイルが変化しても、ビジネスドメインの設計を維持できます。例えば、RESTful APIからGraphQLへの移行や、マイクロサービスアーキテクチャの導入、新しい通信プロトコルの採用など、技術的な変更が生じても、ALPSで定義したドメインモデルは継続して使用できます。これは、ALPSが実装の詳細ではなく、抽象化されたビジネスロジックに焦点を当てているためです。

知識基盤の構築

Taxonomyの実装では、ビジネスエンティティ間の関係性を定義し、階層構造による拡張性を確保します。これにより、組織全体で共通の語彙が確立され、コミュニケーションが効率化されます。Choreographyでは、ビジネスプロセスのフローとサービス間の連携ルールを定義し、システム全体の一貫性と信頼性を高めます。

IAの考え方をドメインモデリングに適用することで、技術的な実装とビジネス要件を自然に結びつけます。ALPSはこの橋渡しを実現するフレームワークとして機能し、組織の知識を体系的に構造化し、進化させる基盤となります。

この取り組みにより、技術の変化に影響されない持続可能な組織の知識基盤を構築する事ができます。